秒速5センチメートル…初恋をこじらせた男におこる悲劇が切ない

秒速5センチメートル 駅のホーム ドラマ・映画

初めて観た時。凄まじい映像美とナイーブな恋愛観で、鑑賞後硬直が解けなかった…。

音楽も完全にマッチしており、凄い監督が出てきたなぁ~と思ったのも今は昔。

今では『君の名は』などで世間にも知られている新海監督の作品。

 

筆者の感想は

【初恋を卒業できなかった男の悲劇、その悲劇は周囲にも影響を及ぼす】

そう、男は立ち直りが難しい…、女は立ち直りが早い…。

女性は子供を産み育てるという本能がある為に、現実的にならざるを得ない。

肉体的には男性に優位性があるが、精神的には女性に優位性があるといううことだ。

現実的に、会わなくなって何年も経った二人に何かが起こることは何もない…。

心に刻まれた思い出を頼りに、今更行動を起こすこともない訳で…。

でも男は夢をみてしまうんだろうなぁ~。衝撃的な再開なんかに…。

 

【アニメ映画・小説】の物語は3部構成になっている。Amazonプライムで鑑賞可能だ。

【漫画】は詳細な部分も補完されているので、アニメなど観られた後で鑑賞をオススメする。


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秒速5センチメートル

 

1.桜花抄

主人公の遠野貴樹と篠原明里の小学生~中1の話です。

貴樹と明里の親は転勤族で、小5の時、明里が貴樹のクラスに転校してくる。
ともに身体が弱く、趣味も同じ読書。自然に趣味が合い、意気投合する2人。

クラスからもその仲をからかわれる。

明里は貴樹が志望する私立中学校を一緒に受験するのですが、親の都合で栃木に転校になります。

中学校に入って、半年後に文通が始まりますが、貴樹の鹿児島への転校が決まります。

栃木と鹿児島では距離が遠く、もう会えないかもしれません。

貴樹は鹿児島に引っ越す前に明里と会う約束をします。

貴樹はこの日のために2週間かけて、人生初めてラブレターを書きます。
でも、無残に風で飛ばされてしまう…。

雪で列車が停まる中で、貴樹は明里に思いを馳せる。

貴樹を待つ間に、明里も彼に向けてラブレターを書きます。

2人は再開し、お弁当を食べ、歩き、見知らぬ納屋で遅くまで話し、いつのまにか眠り、朝を迎えます。

翌朝の電車に乗る貴樹を見送る明里。
明里はもう2人が二度と会えないことを覚悟したのかラブレターを渡さず。
自分にも貴樹にも、励ましのつもりで
「貴樹くんはこの先も大丈夫だと思う。絶対」と言う。
貴樹の方はラブレターを渡せなかったことで、気持ちに踏ん切りがつかず、ずっと思いを引きずってしまった。
この二人の手紙は小説版にのみ公表されております。
小説版も素晴らしいので一読をオススメします。
貴樹はもう2人が二度と会えないことを受け入れられなかった。
覚悟が出来なかった。
その違いが大きい…とてつもなく…

2.コスモナウト

鹿児島での遠野貴樹と澄田花苗の高校3年生の物語。

前編での貴樹と明里の手紙は、お互いだんだん返事が遅くなって途絶えてしまった。

そんな貴樹に中2から花苗は片思いを続ける。

貴樹は花苗に、「話せてよかった」「今日会えなくて残念に思っていた」などと気を持たすことばかり言う。

貴樹も花苗の気持ちに気づいていたが、心は明里のことを忘れられない。

忘れるふんぎりがつかない…ラブレターも渡せず、会えない覚悟が出来なかったからだ。

だからこそ、花苗に「明日のこともわからない。余裕ないんだ。迷ってばかりだよ。できることをなんとかやってるだけ」と言っていた。

そう、心に余裕がなく、新たな恋を始める覚悟も出来ず、それでも花苗とは仲良くしたい。

貴樹は明里にメールを書きます。

手紙を出すのをやめたのはどちらだったのか、はっきり覚えていない。
それ自体重要なことではなかった
もう、手紙に意味がなくなっていたから。
互いの現在を掴みかねてつながりを断つような核心に・・・
二人の絶対的な乖離に触れるのを避けて
当り障りのない空疎な言葉を並べただけのものになっていたから
僕らはずっと一緒だと思っていた
もう二度と会えなくても、この思いだけは変わることはない

2人がお互いを想い続けたいという思いも栃木と鹿児島の距離には勝てず。

認めざるをえなかった。

手紙が2人にとっては意味をなさないことに…。

 

この章で明里は告白され、初恋を卒業した明里は新たな恋を始めます。

そして、いまだ初恋を卒業できない貴樹は新たな恋に踏み出す事が出来ません。

 

花苗は勇気を振り絞り告白しようと貴樹の袖を掴む。

だが、振り返る貴樹は冷たい目で「何も言うな」と睨む。

その時花苗は、貴樹の心には花苗の入り込む余地がないことを悲しくも悟る。

待っていたのは告白すらも許されない現実。
前に進もうとする彼女を、前に進みたくない貴樹が止めてしまう。
告白も許されない、というのは花苗にはつらすぎて可哀そうです。

そして、貴樹は鹿児島から去ります。

貴樹の乗った飛行機を見上げる花苗。

凄く悲しいお話です。

凄くやるせないお話です。

【漫画】ではその後も描かれており、考えようによっては救われるかもしれません。


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3.秒速5センチメートル

1.桜花抄 .コスモナウト はこの章への前振りだった訳ですが、

一番短い章であるにも関わらず、音楽と映像が心に迫り、

胸を締め付けられる内容となっています。

 

東京でSEとして働く貴樹ですが、いまだ初恋を卒業できなず。

恋愛はするのですが、心ここにあらずで、うわべだけの恋人の心を傷つけるだけでした。

 

明里は結婚も決まり、荷物の整理中、渡さなかった貴樹への手紙を見つけ昔を思い出します。

明里はうまく初恋を卒業でき、手紙を見つけるまでは貴樹のことを思い出す事はなかったのです。

ですが、貴樹はずっと心の中に明里がおり、前に進めなかったのです。

 

踏切で大人になった明里と貴樹はすれ違います。

踏切を渡りきった後、お互い振り返りますが、その間を電車が通りすぎます。

電車が通り過ぎた後、明里の姿はなく寂しげな顔をする貴樹。

ですが、振り向き前に進む貴樹の顔は何故か清々しく。

ようやく初恋の呪縛から卒業したように思えます。

この後、貴樹も幸せになれれば良いなと思えるラストでした。

たぶんロマンチストな方には堪らない作品です。

 

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