本作『パラサイト 半地下の家族』は、2020年2月に行われた第92回アカデミー賞で作品賞・脚本・監督など4部門の最多受賞作品です。
韓国映画は嫌いでは無いのですが、ハリウッド作品と比べるとどうしても少し見劣りする感がしていました。
半地下と呼ばれる家に住む決して豊かとは言えない家族が、友人の紹介によりお金持ちと接点が出来ます。
何とか今の生活から抜け出したい家族は、このチャンスを最大限に活かす為に奮闘します。
それは、観ていて応援したくなるほどの高揚感を与えてくれます。
しかし、その奮闘は誰かを追い出し、後釜に家族を送り込む訳で、追い出された元の使用人に対する罪悪感も同時に感じるようになります。
この作品の凄い所は、後半凄まじい衝撃で視聴者を硬直させ、やるせないラストを見せつけてきます。
正直、天邪鬼的な感覚で視聴しなかったのですが、アカデミー賞をとったのもうなずけます。
この作品がもしハリウッド作品なら、観終わった後の感想は違ったものになっていたでしょう。ハリウッド作品には救いが何処かにあるからです。ですがアジア的な後味の悪いラストの方が、心に重く響く時もあります。
Netfliexで吹替えでも視聴出来ます(2021/1/6 現在)
主人公達は 半地下に息を潜めて暮らす貧困家庭
韓流ドラマでは主人公が財閥の御曹司であったり、凄いお嬢様が出てきたりするものである。
それだけ、庶民と裕福な人間との格差が凄いのだろうと薄々感じるものである。
本編の主人公は、半地下と呼ばれる、家の半分が地下にある青年。
もちろん家賃が安いのだろうが、実際に韓国で半地下に暮らす人は80万人以上とも言われている。
この半地下では、太陽の光が室内に入って来る時間が極端に短い為、室内は湿っぽくて、カビの匂いが鼻につく…まさに、この映画の核とも言うべき『貧しい匂い』が充満しているのである。
その匂いは体に沁み込み、容易には取れず、住民達は日常で自覚する事もないのでしょう。
貧しき無職の青年が 裕福な家の家庭教師に
ある日、半地下家族の長男ギウのもとへ、友人が家庭教師の職を持ってくる。
好意を寄せる教え子と海外留学で別れなければいけない為、浪人とは言え信頼できるギウに自分の後釜として紹介するというのだ。
いくら信頼できると言ってもギウは男である。
教え子が好みであれば男女の仲に比べれば友情などもろいものだ・・・
裕福な家への寄生 妹のギジョンも家庭教師に
息子に美の才能があると思っているヨンギョに、ギウは妹のギジョンの身辺を偽り家庭教師として薦める。
息子を溺愛し、疑うことも知らないヨンギョは、これまたギジョンを息子の家庭教師として採用する。
驚くほどチョロイんです。
こうして上手く潜りこめただけでなく、
教え子のダヘは対抗心からか嫉妬し、ギウとキスをする仲になる。
初めての授業の帰り道、ギジョンは父も潜り込めるように罠をはる。
貧しい者は心まで貧しくなるのだろうか・・・
親切な運転手はこの後、職を失うことになる。
裕福な家への寄生 父のギテクは運転手に残るは母
信頼し、気に入っていた運転手を解雇せざるをえなくなり、奥様のヨンギョは人が信じられなくなります。
富と名声をもっているお金持ちは、人に対して慎重にならざるを得ません。
世の中いろんな人がいますから・・・。
どうしても安心できる紹介に頼ってしまいます。
こうしてギジョンの巧みな戦略により父ギテクも運転手の職を得ました。
残るは母を家政婦にすることのみ、最大の難関ですが、妙案がありました。
ギウがダヘンから家政婦の弱点を入手していた。家政婦は凄い桃アレルギーらしい。何、それ? ってな展開ですがこの辺りの展開は苦肉の策でしょう。いたしかたありません。
当然桃を使って、強敵家政婦を追い出し、見事母も家政婦の職を得て
完全に半地下一家が裕福な家に寄生することに成功するのです。
見事な就職活動で、半地下一家の皆が安定した職と収入を得る事に成功しました。
上手くいきすぎな気がしますが、この裕福な家庭、驚くほどチョロイんです。
ただ 幸せを分けてもらいたかった
息子の誕生日キャンプに裕福な一家は出かけ、大邸宅で半地下家族がくつろぐ。
リビングで優雅な団らん・・・
ギウはダヘンが大学に入ったら正式に交際するつもりだと宣言する。
話しは結婚まで盛られ、盛り上がる家族。
冒頭の友人とギウがかぶってしまう。
何故友人は突然留学し、家庭教師の職を譲ったのだろう?
最後まで明かされなかったので深い意味はなかったのかもしれない、勘ぐりすぎた。
ここで、父ギテクは心にゆとりが出来たからか、前運転手の心配をする。
妹のギジョンはまだ心のゆとりが持てないのか、追い出した人達を気遣う余裕はないようだった。
一家団らんのこの瞬間、半地下の家族は裕福な家族から幸せを少し分けてもらっていた
エンディングが近いのかな? と思ってたら物語はまだ半分ぐらい。
この後幸せな展開が飛躍していくのか・・・
一家団らんの時に訪れる 元家政婦
ある意味この家の主であった元家政婦が大邸宅に突然訪ねてきます。
地下室にうっかり忘れてきたものがあるから取りに来たらしいのだが、それはうっかり忘れていいものではなかった。
地下室からさらに地下室へ続く隠し扉を進むと元家政婦が忘れてきたものがあった。
この元家政婦も半地下家族と同じく裕福な家に長く寄生していたのだ。
優雅なリビングから静寂な美を感じる庭園を観ながら団らんしている時に雷鳴と共に雨が降っていたのだが、やはり裕福な家族はキャンプを諦めて大邸宅に帰ってきた。
食い散らかしたリビングを大慌てで片付け始める半地下家族、しかし間に合わずリビングのテーブル下にゴミと共に隠れる半地下家族。
この後の展開を考えると、見つかるかどうかで話の展開が凄く変わるので、スリル満点のシーンでしたが無事切り抜けられました。
ただ、この物語のキーポイントである、貧しい匂い
運転手・家庭教師・家政婦から僅かに漂う匂い。
そう、半地下住民に沁みついた匂いについて、それが何なのかは分かりませんが裕福な家族は少し気づいていたようでした。
後半は 怒涛の衝撃展開
無事、大邸宅を脱出した半地下家族は帰路につきますが、大雨により家は半分水没、凄まじい状態と化していました。
町の体育館に避難していた半地下家族に、そうとは知らない裕福な家族は息子の誕生日パーティーに招待をします。
長男のギウはダヘと仲睦まじく
妹のギジョンは奥様ヨンギョの信頼厚く
父のギテクも御主人に信頼されパーティーのイベントを共に盛り上げようと計画し
母は台所でパーティー料理の盛り付けで忙しい。
このパーティーまで、確かに幸せを少し分けてもらっていました。
長男ギウは、また父と母とあの大邸宅の庭で再会する、やるせない夢を描く
何故、こうなってしまったのか・・・
身に余る幸せを願ったからなのか、その過程が問題だったのか・・・
悲劇が半地下家族だけでなく、裕福な家族をも襲います。
”匂い”
それが、異常な状況で、父ギテクをも制止出来なかった悲しき現実なのか・・・
庶民には分からなくもない衝動。
ですが、結果的に悲劇を極限までにしてしまいました。
ギウは父の手紙を解読し、届くはずの無い手紙を書いています。
それは儚い夢をつづったもので、やるせない悲しみを視聴者に届けてきます。
本当にこの夢がかない、また家族であの大邸宅の庭で再会出来ることを願ってやまなくなる。
そんなラストに、筆者の琴線は激しく鳴るのでした。
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